「ペンギン・ゴッドマザー」=ボースマ博士の最新情報

2010 年 7 月 13 日 火曜日

ワシントン大学のディー・ボースマ博士については、以前(6月のブログ)にも一度ご紹介したので、皆さん覚えていらっしゃるでしょう。

博士は、現代「ペンギン生物学」の生みの親の1人。研究者生活、大学での教育活動歴も33年を超える。ペンギン学の「孫弟子」まで加えると数十人の「ペンギン弟子」を「家族」に持つ、「偉大なるお母さんペンギン」なのだ。
ちなみに、上田は1988年、「第1回国際ペンギン会議」以来のお付き合い。「体に気をつけなさいよ!!」と叱咤激励されている)^o^(

さて、前にもお話した通り、博士は「フンボルトペンギン属研究の第一人者」。
「でも、一番好きなのは?」と無理やり尋ねると、「う〜ん…」と暫く天井を見上げたあと、「やっぱりガラパゴスかな!?」というお応え。「だって、あんな場所にペンギンがいるのよ!絶対面白いしかわいいでしょう!!」と目を輝かせる。「でも、一番長くつき合ってるのは…」「当然!マゼランですよね!!」私が言葉を奪ってそう言うと、ニッコリ微笑む。博士にとっては、どのペンギンも、人間の「ペンギン弟子」同様、甲乙つけがたいほど魅力満点で思い出タップリなのだと思う。

今回、6月27〜29日、ペンギンとは違う会合のため、再び来日された。私は、成田空港までお出迎え。都内のホテルに移動する車中で、そして、ペンギン会議スタッフとの夕食会(博士は大の日本食好き、次は鉄板焼ね!とのご注文でした!)で、長旅の疲れも見せず、熱く熱くペンギンの現状を語っていただきました。

そのポイントを、いくつかご紹介致しましょう。

まず、「ペンギン会議は2010年で創設20周年を迎えます。会議の学術顧問として、『ペンギン会議20周年記念の出版物』に『ペンギン生物学の20年』というエッセイをお願いできないか?」と尋ねてみた。

「ゴメンナサイ!!実は、来年6月頃完成予定で、今、新しい『ペンギンの単行本』を書いてるの。実は私が全体を監修して、なおかつ、『マゼランペンギン』の部分と『保全生物学』の部分とを書くことになってるから、ちょっと難しいのよ。」と申し訳なさそうにおっしゃる。「では、日本のペンギンファンへのメッセージとして、私たちの本に数ページの『序言』をお願いできますか?」と改めてお願いすると「それはもちろん!!」と快諾いただいた。

そのあとすぐ、ボースマ博士いわく。「私たちの本、ちょっと厚くて専門的だけど、訳してみてくれる?」「もちろん!!」こちらも思わぬご提案に、びっくりしたり感激したり…。

実は、これには「古い伏線」がある。
もう絶版になってしまったが、かつて、ペンギン会議では、ボースマ博士が部分執筆したペンギンの本を『ペンギン大百科』(平凡社、1998年)として、翻訳・一部加筆出版した。その「あとがき」で、私は執筆者を紹介した後、「これに匹敵する内容の本格的『ペンギン・データ・ブック』は、今後当分の間編まれることはないだろう。」と断言した。原著が出版されたのが1995年。だから、もし、ボースマ博士編纂の新しい本格的「ペンギン本」が世にでれば、16年目にして、新しく詳しい「ペンギンの専門文献」が登場することになる。

16年という歳月が、果たして「当分の間」という表現にあたる時間経過かどうかは別として、ボースマ博士の新しい本は期待するに値する内容になるはずだ。
というのも、ボースマ博士ご自身が執筆されることはもちろん、彼女の優秀な「ペンギン弟子」達が、「総掛かり」で分担執筆するからだ。出版社は「ワシントン大学出版」。ワシントン大学と「ボースマペンギン学派」の総力を結集した内容になることは間違いない。彼女の専門は「保全生物学」だから、ペンギン研究史上初めて、「保全に軸足を置いたペンギン文献」が誕生するといってもよい。

上田の主な関心も「ペンギン保全」にある。この本は、私自身にとっても、出版を一日千秋の思いで待ちわびる「刺激的文献」なのだ。楽しみですねぇ!!

というわけで、ボースマ博士からは様々な「最新情報」を伺ったのだか、この本に収録を予定されている事柄をあまり詳しくここでご紹介するわけにはいかない。どうか、ご理解下さいm(__)m!!

だから、あと2つだけ、情報をお届けすることでお許しいただきたい_(._.)_!!

その1:ペルーの「アンチョビ漁とペンギンとの関係についてまとめた7分間の映像」を、間もなく、YouTubeで公開するそうだ。「ワシントン大学、ボースマ=Boersma、ペンギン、ペルー」等で検索すれば、見つかるはず。

博士によれば、ペルーで水揚げされたアンチョビの60%は中国に輸出され、今後、その量と割合はますます増加するだろう、とのこと。人間の食糧に占める海洋資源の割合は、間違いなく人口増加に比例して増え続けるだろう。その時、「ペンギンとの共存」は果たして可能なのか?大きく、難しい問題だ。

その2:フンボルト、マゼラン、ケープの個体数減少、従来の繁殖地からの移動の最大かつ直接の原因は、意外にも「捕食者の急増」だろう、という見方。

最近の3種は、いずれも、本来の繁殖地から姿を消しつつあり、特に、ケープとマゼランの減少率は高い。ケープは、最近10年間で半減、マゼランも、最近10年間で25%減少したという。(フンボルトは変動なし。しかし繁殖地からの移動が激しい)

ボースマによれば、この直接の主因は、ペンギンを食べるオットセイやサメ等の海の捕食者が急増しているためだという。
これらの捕食者は、海上で十分な食べものが確保できなくなって、主にペンギンを狙うようになり、ペンギンの繁殖地に集まってきているのではないか?
それを嫌がったペンギンたちは、これまでの繁殖地を捨てて、新しい土地を求めて移動しているのだ。

確かに、ケープペンギンは、これまでナミビアから姿を消しつつあったが、最近、急に数が回復しているという。また、西ケープ(ダッセン島、ロベン島等、ケープタウン周辺)にいたペンギン達が姿を消し、東ケープに大挙して移動しているという情報もある。
この現象については、今後も追跡し、報告していくつもりだ。

さて、ボースマ博士からの情報は、いかがでしたか?
実は、博士は、今年10月に、また来日される予定。その時には、レクチャーをお願いしてある。生で博士をご覧になりたい方はぜひどうぞ!!

レクチャーの詳しい情報は、このブログでお伝え致します!!どうぞ、ご期待下さいm(__)m!!

Dee Boersma Dee Boersma Dee Boersma

コメント / トラックバック 3 件

  1. […] 「ペンギン・ゴッドマザー」=ボースマ博士の最新情報 ? ペンギン会議 …「ペンギン・ゴッドマザー」=ボースマ博士の最新情報. 2010 年 7 月 13 日 火曜日. ワシントン大学のディー・ボ […]

  2. manchot より:

    「ペンギン大百科」はペンギン好きにとっては、どんな本より、面白い?です。
    そして、疲れてる時は、「ペンギン図鑑」で癒してもらってます。
    新しい、ペンギン文献、楽しみです。

  3. 上田一生 より:

    manchot 様
    『ペンギン大百科』をお誉めいただき、ありがとうございましたm(__)m!!誉めてくれたんですよね!?また、「新しい本格的ペンギン紹介文献」、そろそろ出なければいけないと考えております(^-^)/頑張りますので、ご支援のほど、何卒よろしくお願い申し上げますm(__)m!!

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