南米マゼランペンギン救護活動の現状〜その2〜ウルグアイ救護施設の奮闘

2010 年 11 月 2 日 火曜日

やっと、リチャードさんのお話にたどり着いた。今回は、リチャードさんの施設のお話をしっかりしたいと思います。

リチャードさんのフルネイムはリチャード・テソールさん。「まるで頑固な漁師さんみたいだ!」というのは、初めて彼を見たある水族館関係者の表現。

確かに、頑固かもしれない。でも、野生の現場で、多くのペンギン、あるいは、ほかの生きものの「生き死に」に立ち会ってきた立場から見ると、リチャードさんの振る舞いは「美事」だ。
決して、誰も責めない。特に、生きもののことを本当に気遣っている人のことを悪く言うことは、決してない。それが「美事」!

ウルグアイ東方共和国。高級リゾート、観光地として著名なピリアポリスの近く、コロラダ半島はプンタ・デル・エステに、「SOS海洋生物救護センター」を設置。もう15年以上、そこで海洋生物の救護活動を地道に続けている。

観光地ピリアポリスの高級ホテル 観光地ピリアポリスの高級ホテル外観

このブログでは、マゼランペンギンやイワトビペンギンしか紹介してこなかったが、それだけではない。
今までに救護した海洋生物は、例えば、キングペンギン、南アメリカオットセイ、南極オットセイ、オタリア、ヒョウアザラシ、ミナミゾウアザラシ、ラプラタカワイルカ等々…。実に多くの傷ついた野生動物の命を救ってきた実績がある。

近くの漁港に姿を見せる野生のオタリア 近くの漁港に姿を見せる野生のオタリア2

過去には、大企業から寄贈された三菱のピックアップを、動物などの移動、搬送に使っていたこともある。
しかし、最近の世界的な経済不況のため、大企業からの寄付金や援助が途絶えた今、その不可欠なピックアップさえも、日々の餌代確保のため、手放さざるを得なくなった。

寄贈された三菱のピックアップ

彼を支える「マンパワー」にも翳りが見える。当初は、あるいはマスコミで取り上げられた直後は、大学生や一般のボランティアが増える。
しかし、それは束の間のこと。報道熱が去り、一般の関心が遠退くと、ボランティアは去っていく。あるいは、ボランティアの「対価」を要求するようになる。

「それが情けない…」リチャードさんは、そう溜め息をつく。…そうだよね…、それが人間の性だ。

リチャードさんの施設1 リチャードさんの施設2 リチャードさんの施設3

でも、彼には熱烈な支持者がいる。例えば、このブログでも紹介したロドリゲス夫妻。スペインからウルグアイに、「理想の生活」を求めて移住してきた。
彼らは、献身的にリチャードさんの活動を支えている。ヌリアさんは、毎日、信じられないくらい過酷な労働をこなし、リチャードさんのルーティンワークを支えている。
その妻の熱い思いを、夫のエドワルドさんが支える。エドワルドさんは、スペインで著名な船乗り。実に素晴らしい「海の男」だ!

リチャードさんとヌリアさんがペンギンをあらっている様子

もちろん、ロドリゲス夫妻以外にも熱烈な支持者はいる。例えば、小澤由紀子さん。彼女の活躍は目覚ましい。
リチャードさんも、全幅の信頼をよせている。ペンギンだけでなく、水族館での専門的知識・技能を活かしての活躍は、すばらしい!

今年の、マゼランペンギンのリリースは大成功!!
でも、一旦リリースしたイワトビ君は戻ってきてしまったようだ。来年の「リリースシーズン」まで待たなければならない。その間の飼育方法は?

リチャードさんとイワトビペンギン

リチャードさんへの支援は、資金面だけではない。様々な可能性に柔軟に対応し、良い成果を挙げられるようなしたいものだ。

コメント / トラックバック 16 件

  1. manchot より:

    記事を読みながら、自分は何が出来るのだろうか?と考える。
    直接行って、お手伝い出来るわけない。
    頑張れって、声援を送っても、現状は変わらない。
    「SOS海洋生物救護センター」の賛助会員とか、ないんですか?

  2. 小澤由紀子 より:

    ご紹介頂き、ありがとうございました。
    数日前に、ラプラタ・カワイルカが救助されました。
    ラプラタ・カワイルカは、環境保護論者から、毎年多くの個体が刺し網の被害になっており、種の安定的な存続を困難にしているという指摘があるそうです。

    すっかりリチャードさんを仲間だと思ってしまった、イワトビ君と共にセンターで療養しています。

    「SOS海洋生物救護センター」の賛助会員ですか!? それは、良いアイデアですね〜。

    来年のイワトビ君のリリースまで、里親制度を設けるのもどうでしょうか??

  3. 上田一生 より:

    manchot 様、小澤由紀子 様

    いつも、貴重なコメント・情報をありがとうございます!

    以前から、何回も触れてきましたが、「北半球に住む私たちが、どのように野生のペンギン保全にかかわっていくか?」という問題は、とても難解なパズルです。

    でも、私は、「どうやったら私たちが貢献できるか考えて、いろいろ試してみることそのもの」も、立派な「保全への貢献」だと考えております。
    確かに、「直接現地に出掛けて手伝う」ことや「大金をポンと寄付する」こと等は、とてもわかりやすい貢献ですね。
    カッコいいし…。

    しかし、現地の状況を正しく伝えたり、現地で活動している人々の相談にのったりすることも、非常に大切です。

    私は、テレビ番組を監修する中で、「撮影協力費」として現地に「資金が落ちる」という方法や、新しいペンギン飼育施設を監修する中で、「現地と協力協定を締結する」という方法で「実質的で長期的・継続的な支援」が実現できるよう、努めてきました。

    大切なことは、現地の関係者に、如何に「直接かつ確実に支援を届けるのか?」ということ。
    そして、「刹那的・一過性的支援」ではなく、継続的・長期的な支援を、如何に堅持できるか?ということです。

    「里親制度」、「基金の設立」は、とても素晴らしいアイディアだと思います。

    ただ、それに伴う「運営上の課題」がいくつかあります。
    その制度を維持・管理する「マンパワーの継続的確保」、あるいは「管理事務職のハード準備やスペースの確保」、「現地への安全で確実な送金方法」等々…です。

    でも、これ等は決して克服不可能なハードルではありません。
    小澤さん!いよいよ「里親制度」の実現にとりかかりますか?

  4. とり より:

    私もここにおじゃまさせていただいてから、何か出来ることはないかと事あるごとに考えてきました。
    正直、金銭的な援助は簡単、かつ実行可能な手段の1つではあると思っておりました(大変おこがましいいい方で申し訳ありません)。

    ただ、それはあくまでも一時的なもの。
    根本的な解決策にはなり得ません。

    「日本の温帯ペンギンの飼育技術の高さ」を野生に還元する方法、「海外のペンギンの現状を正しく日本に伝える方法」の1つに、里親制度は大きく貢献できるのではないかと思います。里親ですから、現地に行って援助する機会もあれば、ペンギン好きにとってはまさに「一石二鳥」ではないでしょうか?

    参加したい人が、その人のペースで(←無理なペースでは絶対継続できないので)継続的に支援できる制度作りが出来れば、本当にすばらしいことだと思います。私も、何らかの形でお力になれればと思っています。

    もう1ヶ月後に迫ったペンギン会議で私の素性はばれるのですが(もうバレていますか?(^^ゞ)、こういう話は大事に、かつ、熱く語りたいです!!

  5. 斎藤美香子 より:

    この前にありますとり様のご意見について、一言。

    上田先生、この場に相応しくないコメントでしたら、削除をお願いいたします。

    >金銭的な援助は簡単だが、あくまで一時的なもの、根本的な・・・

    ということですが、「机上の理想論」を語ることは簡単です。なにもかも解決されるような根本的な理想論を「すぐに現実化」できるのが一番の方法でしょう。

    理想論はいろいろあるでしょう。
    しかしながら、現地で実際に働いている方が、日々活動を十分に行っていく上で、まずは少しでも資金が必要であるのは現実です。

    私たちは、このウルグアイ施設の募金のために、春にチャリティイベントを行いました。それには何十人という方々がボランティアで参加し、入念に企画準備し、それに対し何百人という方々が善意の募金をしてくださったわけですが、それは決して「簡単」な試みではありませんでした。

    ペンギン会議、そのほかのグループや団体でも、フンボルトペンギンの保全やチリ地震の救済など、長年募金や資金援助をされています。

    私自身はフォークランドの野生動物の保護に関心が深く、地元の保護団体2つに所属し、会費や年に一度の寄付金の形で、本当に小さい援助ですが、ここ9年間続けております。ペンギンの里親にもなっております。

    壮大な理想論を考えることも大切ですが、とり様のおっしゃるところの「簡単」であるはずの金銭的援助も、それに対する一般の方々の関心も十分でないのが現実です。まずは草の根の地味な活動から、そして根本的解決につながるのは、その地味な活動しかないと思っております。

  6. 上田一生 より:

    とり 様

    だいたい「そうじゃないかな?」くらいには「バレて」ます(^o^)v

    今回の「全国大会」には、やはり、もう30年以上にわたってマゼランペンギンの研究と保全活動を続けてこられた、この分野の第一人者=ボースマ博士がみえますので、いろいろ詳しく生々しいお話が聞けるでしょう。
    その時、とりさんの保全活動の実践例を伺えるのを、楽しみにしております(^o^)/

  7. とり より:

    斎藤美香子様、上田先生

    きれい事を並べてしまい、大変失礼いたしました。
    言葉が足らなかったことをこの場を借りてお詫びいたします。

    実直に、私が知らないだけでしたらこのコメントごと削除いただければと思います。地球上の野生生物保護のために資金を純粋に送金する術は、私は存じ上げておりません。

    言い訳でしかないかもしれませんが、ペンギンについて関心を持って3年ばかり。「野生のキングペンギンをこの目で見たい」との一心で斎藤さんのお力を借り、ようやく昨年末〜今年初めにフォークランドを訪ねることが出来ました。とてもいい経験をさせていただいたと思っております。

    残念ながら、サラリーマンである私が現地に足を運んでお力になることは、現実的に難しいと思います。だとすれば、自分に出来ることは「机上の理想論」ではなく「具体的に自分に出来ること=資金援助をする術を探す」ことなのかとも思っています。

    ・・・と書いていても具体性に欠けるばかりですので、斎藤さんが上のコメントで書かれている「地元の保護団体2つ」に送金する術を調べたいと思います!

  8. 斎藤美香子 より:

    とり様、わざわざコメントを頂き恐縮です。

    私の場合、フォークランドへの関心が高いですし、長年の交流から、地元の団体に会費・寄付金という形で、ごく小さな援助ではありますが行っておりますが、別にそこにこだわる必要はないかと思いますが。

    特に資金的に困窮し、切迫しているのは、先生がとりあげていらっしゃるウルグアイの施設です。こちらは、里親制度など工夫をこらして援助金を募るなど、これから急ぎ取り組まなければならないことでしょう。

    またご存知かと思いますが、ペンギン会議やペンギン・スタイルさんでもチリフンボルト保全のための募金活動などもされております。

    そちらでしたら、海外送金の問題などありませんし、また危急度も高いのはそちらの方かと思いますがいかがでしょうか。

  9. 小澤由紀子 より:

    上田先生
    里親制度を始めたいのですが、その方法についてただ今、試行錯誤中です。何か良い意見がありましたら、ご指導ください。

  10. 上田一生 より:

    斎藤美香子 様、とり 様

    斎藤様、いつもお心遣いありがとうございます。

    全く仰る通りで、リチャードさんの施設は、現在「早急に資金的支援が必要な状況」です。
    詳細は、次回の「ペンギンまみれ」でご報告致しますが、「マリンピアクラブ」の皆さんとご協力いただいた皆様の温かい「浄財」は、リチャードさんの急場を凌ぐ強い味方になりました。

    小澤さんを通じてリチャードさんやヌリアさんから、ペンギンや「SOS(リチャードさんの施設名)」の活動に関する「映像や情報」が次々に送り込まれているのは、皆様のお心と行動が現地の方々に理解され感謝されている証拠です。
    お力添え、本当にありがとうございます!!

    とり様、私はこんなふうに考えております。

    現地の方々の深刻な要望+現地への直接訪問と交流+日本の支援者への正しくタイムリーな情報提供、この3つの要素が整って初めて、現地関係者と支援者との信頼関係が構築できるのです。
    野生動物の保全活動は、「片思い」や「頭でっかち」では実現できないし、長く続けることもできないでしょう。
    どんなに小さなことでも、現地の方々が「本当に必要としていること」を「必要としているタイミング」で提供できれば、それは「極めて有効な支援」だと言えるでしょう。

    わずか23年間ほどの乏しい経験ですが、私の体験では、保全活動に一発大逆転の「ウルトラC技」はないと思います。
    例えどんなに大金を積んでも「役に立たないこと」もあります。
    泥臭く、コツコツいくしかない。いつも、そう自分に言い聞かせて活動してきました。

    今、もしとりさんに「資金的援助の余裕」がおありならば、斎藤さんがご紹介下さった「実動中の募金窓口」がいくつもございます。
    どうか、そちらにご援助下さい!

    それとは別に、リチャードさんの施設への「より有効で素早い資金提供(募金と送金のスピードアップ)」法を実現しなければなりません。
    その新しい「ルート」が確立できましたら、また、そちらにもご協力をお願い申し上げます!

  11. 上田一生 より:

    小澤由紀子 様

    まずは、「イワトビペンギンの里親募集」から始めましょうか?
    課題は、リチャードさんへの「ダイレクトな送金ルートの確立」ですが、何か良いお知恵はありますか?
    それが確立できましたら、このブログで「里親募集」を開始できるよう、平川さんと井上さんにご相談致しましょう。(このコメントをお読みの方々へ:金融機関や郵政機関への信頼や保障制度が確立されている日本とは違い、アルゼンチンやウルグアイでは、「安全確実で信頼できる送金方法」がなかなかないのです。)

    小澤さん、お忙しいところを申し訳ございませんが、ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げますm(__)m!!

  12. とり より:

    斎藤美香子様、上田先生

    ご丁寧にお教えいただき、ありがとうございます。

    ペンギン会議での寄付は、オークションという形で貢献させていただいておりますので、次はペンギン・スタイルさん経由での支援だと思っています。
    あとは、ウルグアイのリチャードさんへの支援方法が決まったら、ですね。

    先生がおっしゃられるところの「片思い」にならないよう、カタチにしていこうと考えています。いろいろとお教えいただき、ありがとうございました!

  13. adelie より:

    遅ればせながら皆様のコメント拝読させていただきました。
    「ペンギンのために何かする」方法、本当にいろいろとありますよね。また、いろんな方法や要素が複雑に絡み合うところもあるでしょうし・・・。
    上田先生の「保全活動に一発大逆転の「ウルトラC技」はないと思います。」というお言葉、なるほどと考えさせられました。自然、現地の社会情勢、日本はじめ現地以外の社会情勢・・・そう単純ではないですよね。
    臭くても出来ることの積み重ねを大切にしたいです。

    ところで、ペンギン会議の話題が出ていますが、次回はいつですか?調査不足ですみません。今まで一度も参加したことがなく(日程が合わなかったので)、いつか参加したいと思っています。

  14. 小澤由紀子 より:

    上田先生
     イワトビペンギンの里親制度を是非とも行いたいと思います。
    どうぞ力をかしてください!!
    「ダイレクトな送金ルートの確立」ですが、手数料がとられてしまいますが、Western Union と言う方法があります。
    詳しくは、こちらをごらんください。
    http://www.westernunion.co.jp/jp/how_to_send.php#transaction_fee

  15. 上田一生 より:

    小澤由紀子 様

    よいご提案をありがとうございますm(__)m!!

    Western Unionは、役立ちそうなルートですね。
    ただし、これを「里親希望の方」に直接使って頂くには、ちょっとハードルが高いかも知れませんね。

    一旦、こちらが準備した国内の銀行口座などに費用(寄付金と送金手数料)を振り込んでいただき、そこからまとめてリチャードさんに送金する、という方法はいかがでしょうか?
    その最初の「振り込み」の時に、「里親希望の方」のお名前、ご連絡先、メッセージ等をお預かりするということではどうでしょう?

  16. 上田一生 より:

    adelie 様

    アルゼンチンとウルグアイへの「資金提供」案、「保全とお金」に関する私の考え方については、「南米マゼランペンギン救護活動報告〜その3〜」をご覧下さいm(__)m!!
    http://www.penguin-ueda.net/weblog/penguins/1609

    また、「ペンギン会議全国大会」についてもトピックスにアップ致しましたので、ご検討下さい。
    http://www.penguin-ueda.net/topics/1601

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