ペキン、王府井の「クリスマスペンギン」

2010 年 5 月 11 日 火曜日

かなり以前から、東アジアに「緩かなペンギンブーム」が来はじめているなあ。そういう予感がしていました。

「ペンギンをカワイイと思うのは日本人だけ!!」と、大々的に断言する意見が多いのですが、私は以前から「果たしてそうかなあ?」と、かなり疑問に思っていました。

たしかに、外国では、特に日本人が「手本として尊崇してやまない欧米」では、あからさまに「ペンギンはカワイイ!!」という人は少ない。多分、正面切って「ペンギンをカワイイと思うか?」と尋ねれば、「カワイイより凄い生きもの」という反応がかえってくるだろう。

しかし、これは「欧米人特有の建前」だと、私は感じている。特に、ペンギンを飼育したり研究している人間を捕まえて、「どう思う?」なんて尋ねても、最初から「カワイイ!!」なんて答えがかえってくるはずないじゃないか!彼らは皆、研究対象や飼育動物として、かなり真面目に、日々ペンギンと向き合っているのだ。「素晴らしい生きものだと思う。」というのが、むしろ正常な反応だろう。

私はかつて、ペンギン生物学の大御所、バーナードストーンハウス博士に、初っぱなから「ペンギンてカワイイよね!」と言われたことがある。「ハイ」と答えると、博士は満足げに頷いた。

それだけじゃない。かなりの数の欧米の動物園や水族館を周り、ペンギン展示を見てきた。その時、何時間かずっとペンギンプールの前にいて、見学に訪れるお客さん達の反応を観察し、メモしてきた。そのノートの大部分は、「カワイイ!!」という反応で埋められている。こどもたちの反応は、特にハッキリしている。

だがしかし、そういう欧米人でも、今の日本人のように、すぐにそれを「カワイイ!!」と単純=ワンパターン(あるいはボキャ貧)で表現したり、すぐに「カワイイを商品化」しようとはしない。「カワイイ」で自分自身や街や身の回りを飾ったり、大々的に「Cawaii!キャンペーン」を展開しようとはしない。

このへんが、「カワイイ」に対する日本人と欧米人の違いの1つだと思う。

しかし、どうやら情勢は少しずつ変化しているようだ。アキバやマンガの例を持ち出すまでもなかろう。欧米人の中から、新しいカワイイ表現にシンパシーを感じるムーブメントが起きつつあるらしい。

この情勢は、東アジアでも同様だ。いや、かえって東アジアの方が、より加速度的に「日本式カワイイ表現」を受容し、自ら新しい表現を造り出そうとしている気配が強い。

昨年末、クリスマスはとっくに過ぎた頃、中国、北京を訪ねた。真冬の北京は初めてだったが、北京動物園は、独特の雰囲気があって楽しかった。動物園の話は、別のカテゴリーでいずれ紹介します。

北京を代表する繁華街、「今やニューヨークを抜いた!」と中国人が豪語する、目玉中の目玉、王府井(ワンフーチン)の大ショッピングモールには、華やかなクリスマス飾りが目立った。そのメインの1つがこれ!「ペンギンとのツーショットコーナー」や「ペンギンバナー」だ。

ペンギンツーショット ペンギンバナー

中国には、まだ7・8回しか行ったことがないが、こんな主役を勤めるペンギンに出会ったのは初めてだった。そういえば、北京動物園のペンギン展示も、大規模に改装されていた。15年前に行った時には、いるんだかいないんだかわからないほど質素(かなり無理して良く表現してます)で、かわいそうな展示だった。

都市部では、何もかもが急速に豊かになりつつある中国。特に、オリンピック後の北京の変容ぶりは凄まじい。だから、ペンギンがちょっと出てくるぐらいは当たり前。そんな捉え方も可能だろう。

しかし、この「静かなペンギンブーム」は、中国に限ったことではない。台湾や韓国でも、似たような状況になりつつある。しかも、そのキーワードは、「カワイイ」だと思う。

では、なぜそうなのか?

その謎解きは、焦らずゆっくり楽しみましょう。

ともかく、「東アジアでペンギンへの注目度が高まっている」ということだけは、しっかり指摘しておきたい。

コメント / トラックバック 4 件

  1. 新山 より:

    確かにペンギンはかわいいですね。見ている分には。
    お客様の反応を見ると、ほぼ100%が「かわいい」です。
    でも、いつも見ていると、「かわいい」というよりも「おもしろい」ですね。

  2. 上田一生 より:

    新山 様
    いつも貴重なコメント、ありがとうございます!内外の動物園や水族館のペンギン展示の前に陣取って、「観客の反応や発言・会話」を数時間にわたって記録したことが何回かあります。30年以上前から、洋の東西を問わず、「かわいい!」という反応がダントツのトップです。しかし、新山さんがお感じになった「おもしろい」あるいは「興味深い」という反応も決して少なくありません。私は「かわいい」は「入口」だと考えております。「かわいい」の次に「何を感じさせられるか?」が、動物園や水族館の展示効果の良し悪しを左右する重要なポイントではないでしょうか?「かわいい」だけで素通りされてしまうようでは、「何かが足りない」と考えております。いかがでしょうか?

  3. 新山 より:

    上田様
    こちらこそ、いつも鋭いご指摘をありがとうございます。
    「かわいい」の次の「何か」を用意していない自分の怠慢を再度認識されられました。
    いろいろ考えてみます。
    またご指導をお願いいたします。

  4. 上田一生 より:

    新山 様
    コメントありがとうございます!!新山さんが「怠慢」だなんて、そんなことは決してありません。その証拠に、こうして私のサイトにまで「研究の網の目」を張っていらっしゃるじゃないですか!「かわいい」の次に何を「仕掛けるか?」あるいは「求めるか?」というのは、そんなに簡単じゃありませんよね!私が「長崎ペンギン水族館」で意図したのは、「なぜ?」と「なるほど!!」です。丁寧な解説や様々なアクティビティーはそのためです。また、「ふれあいペンギンビーチ」の私なりの狙いは「おもしろい!」あるいは「楽しい!」です。一方、下関水族館の「ペンギン村」の「亜南極ゾーン」で目指したのは「スゴい!!」です。さて、この狙い、新山さんがご覧になって、どれくらい達成できているとお考えでしょうか?厳しく採点してみて下さい_(._.)_!!

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