南極南大洋連合(ASOC)日本コンサルタントの沼田美穂子様から先日来お伝えしてきた国際会議の結果に関する残念な情報をいただきました(~_~;)!!

2012 年 11 月 3 日 土曜日

まず、沼田美穂子様からいただいた「公式プレスリリース」をご覧下さい!!

AOAメディアリリース 2012年11月1日

南極海、悲運の日:CCAMLRがすべての海洋保護区指定を持ち越し

[2012年11月1日、ホバート] 南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は現地時間1日、2週間にわたる討議を終えたが、注目されていた複数の海洋保護区指定案はいずれも採択には至らなかった。これについてAOA(Antarctic OceanAlliance、南極海連盟)は深い遺憾の意を表し、同委員会が宣言している代表的な海洋保護区網の構築を実行に移すためには努力を倍増する必要があると警告した。

結論は持ち越されたが、CCAMLRはセッション間特別会合を来年7月にドイツで開催することで合意した。そこで懸案の海洋保護区指定候補地に関する科学情報をすべて収集する。結論の持ち越しについては多数の加盟国代表が強い失意を表明した。

「今年のCCAMLR会議には世界中の人々の目が注がれていました。南極海を確実に保護する施策が合意されるよう注目していたのです。けれども実際に合意されたのは半年後にまた会合を持つことだけでした。」とAOA代表スティーブ・キャンベルは語った。「CCAMLR加盟諸国は南極海洋保護区について何も成し遂げることができませんでした。複数の国々が保護への努力を意図的に妨害した結果です。」

キャンベルは米国やEU、フランス、オーストラリア、ニュージーランドなどの代表らはこの2週間、保護区指定のため建設的な提案をすべく注力してきたと言及してから、「すべての加盟諸国は今回の責任を取り、南極海に海洋保護区・禁漁区ネットワークを構築するという公約の実現に向け出直すべきです。目標であった今年より遅くはなってしまいますが。」と述べた。

「私は失意とともに憤りを感じています。」と語ったのはASOC(Antarctic and Southern Ocean Coalition、南極南大洋連合)専務理事ジム・バーンズである。「私が初めてCCAMLR会議に出席したのは1980年、CAMLR条約(南極の海洋生物資源の保存に関する条約)が話し合われていたときです。以来、この条約の変遷を見守ってきました。CCAMLRは海洋保護の先駆者であると自負してきたはずが、今年は重大な公約を尊重できずじまいとなりました。これに対する責任も、失敗という事実も、すべての加盟国が負うべきものです。」

WWFのポール・ギャンブリンも失意をあらわにした。「南極海に合理的な海洋保護区体制を構築するために、WWFは長年にわたりさまざまな科学研究活動を支援してきました。ロス海や南極大陸東岸海域などの保護区指定の先延ばしを裏付けるような科学データは一切存在しません。来年7月の特別会合は、合意形成に至る最後の場とならねばなりません。そして引き続き、その他の保護区指定に関する業務を進めなければなりません。すでに時間の余裕はなくなっています。」

「今年のCCAMLRは南極海保護に従事する組織というより、漁業団体のような行動をしてきました。」と述べたのはグリーンピースのファラ・オバイデュラである。「この失態からわずかでも望みをつなぐものがあるとすれば、海洋保護区指定への努力を倍増することに大多数の加盟国が同意したことです。問題はロシア、中国、ウクライナなどが次回会合に参加し、海洋保護推進に賛同するかどうかです。」

「ロス海と南極東岸海域の保護について、また科学について、失意が再燃した形です。」と、ピュー(Pew)環境グループ上官ジェリー・リープは語った。「南極大陸を取り巻く比類ない、活気に満ちた海洋生物を保全するため、加盟各国がともに努力していくことで合意したのは2011年のことでした。けれども代表たちは、監視されていない大規模漁業に門戸を大きく開いたまま、それぞれ帰途に着くわけです。」

24の国とEUから成るCCAMLRは今回の会合で、南極海でもとくに重要な2つの海域での保護区指定について検討してきた。世界で最も無垢の海洋生態系を保つロス海の160万平方キロの保護区案と、南極東沿岸の190万平方キロの保護区案である。

「AOAおよび30のメンバー組織は今後、CCAMLRが公約を尊重して海洋保護区・禁漁区ネットワーク構築を実現させるよう、活動を倍加していきます。このかけがえのない環境を未来に残すための努力です。」とキャンベルは決意を述べた。

*問題の経緯***

●AOAの研究では、南極海の実に40%にあたる海域が海洋保護区・禁漁区ネットワークとして保護される必要があると判明しています。これは現行の海洋保護区面積のほか、これまでに行ってきた保護策や保護計画の分析で特定されていた海域、また、新たに保護の必要性が明らかになった、極めて重要な生息地などを合わせた結果です。

●南極の海洋生態系をおびやかすものは増え続けています。気候変動による影響はクジラやアザラシ、そしてペンギンなど海鳥の生息地やエサの状態を悪化させつつあります。またシーフードに対する需要がヨーロッパや北米、アジアなどで高まる中、世界のあちこちで乱獲や漁業資源の枯渇が散見されており、漁業の手は南極海の生物資源にも伸びています。

●南極海の保護を求める市民の声はここ1年間で急速に拡大し、大規模海洋保護区への賛同者は120万人を超えました。AOAは世界30の環境保護団体からなる連盟組織で、メンバー組織にはピュー(Pew)環境グループ、WWF、グリーンピース、国際動物福祉基金(IFAW)、南極南大洋連合(ASOC)、その他中国や韓国、ロシア、ノルウェー、ニュージーランド、米国、英国の団体等があります。

お問い合わせ・連絡先:Blair Palese, AOA Communications Director: +0414 659 511,blair@antarcticocean.org
www.antarcticocean.org, Twitter: #JointheWatch, #Antarcticocean

メディアリリースビデオ・写真:http://www.reru.com.au/Mediafiles/Antarctic_Ocean_Alliance/Videos/

高画質写真のご請求も上記 Blair Palese までお願いいたします。

沼田 美穂子(ASOC日本コンサルタント)

沼田美穂子様、貴重な、そして大変残念な情報をありがとうございましたm(__)m!!

この条約成立に向けて進められた「科学者の共同アピール」に参加した私としても、事態の進展を期待していただけに、大変残念な結果でした。

最近、アフリカ取材から帰国されたばかりのある著名なプロカメラマンから直接うかがった話ですが、アフリカでも「アジアの新興超大国」の傍若無人ぶりは、凄まじいようです。そのために、現地の方々が主催する野生動物観光が被害を受けたり、象牙の乱獲目当てのアフリカゾウの密猟が急増しているそうです。

このブログでも何回か記しましたが、南米太平洋岸諸国でも、アンチョビ等の海洋資源を高値で買い占めようとする「アジアの新興超大国」の進出が著しく、アンチョビの乱獲が激しくなり、多くの海洋生物が激減し海洋生態系に深刻な歪みが生じてきているようです。食糧確保(南米の場合はブタの飼料としてのアンチョビ確保)に狂奔するこの国の姿を見ていると、必ず南極海を次のターゲットとしてくることは明白です。

かつて、19〜20世紀中頃にかけて、先進国が南極海に押し寄せて「捕鯨オリンピック」に熱狂したことに比べると、今回の危機は二重の問題を抱えています。それは、かつてはクジラが全ての中心でしたが、今回は南大洋全域の海洋生態系をそっくり根こそぎ破壊しかねない危険な行動に「アジアの新興超大国」やロシアやウクライナが出てくる可能性があることです。ある特定の生物種に止まらず、南大洋全域の生き物が危険にさらされているのです。しかも、「アジアの新興超大国」は、「近代化における歴史的被害者」という「二つ目の顔」を用いて、地球温暖化防止についても積極的かつ真面目に貢献しようとはしないのです。

南大洋は誰のものでもないと同時に人類の共同財産でもあります。だから各々早い者勝ちで勝手にやれば良いというのではなく、だからこそその貴重な共同財産を我々の子孫たちのために手つかずのまま遺すべきなのです!!

次回のドイツでの会合に期待したいと思います!!

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