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日橋園長!急いで読みました(^o^)/

2011 年 1 月 18 日 火曜日

だいぶなが〜い間、「ブックレビュー」をサボってました(~_~;)本当なら、ここでご紹介しなければならない数々の書籍があるのですが…、ゴメンナサイm(__)m!!
今年は、できるだけ意識して、様々な新刊や「重要本」、気になる本を見ていきたいと思います(^o^)/

さて、お詫びから入りましたが、そもそも今回のブックレビューのきっかけは、埼玉子ども動物園の日橋一昭園長の一言、「エッー!まだ読んでないの!?」が始まりでした。

皆さんご存じかと思いますが、今、私は埼玉子ども動物園の新しいペンギン展示施設=「ペンギンヒルズ(通称)」の監修をしております。その中で、日橋園長と共に、フンボルトペンギンの生息地、チリのプニウィルを訪れました。
なんせ、日本からみて地球の反対側のチリですから、往復するだけで「大旅行」になります。その長い長い道中、「動物園論」の話題になったとお考え下さい。
その時、園長から、私が最新の重要な「動物園論」を読んでいないという、厳しいご指摘を受けたのです(~_~;)(汗)

その本とは、『動物園革命』(若生謙二著、岩波書店、2010年12月22日刊)のこと。
帰国後、時差ボケに苦しみつつ急いで購入し、夢中で読みました。面白かったあ〜(^o^)v久々に、硬質の「動物園論」を読んだ充実感がありました。

動物園革命

著者の若生先生は、農学博士。現在、大阪芸術大学教授で、造園学に基礎をおきつつ、日本やアメリカの動物園の歴史、動物観研究、ヒトと動物の関係学に関する様々な論考・著作を発表していらっしゃる。

実は、1954年生まれで、私と同い年なんですね!ですから、本の半ば近くまで自伝的に語られる様々な逸話が、同時代人として、実によく理解できました。
日橋園長も、1歳上ですから、たぶん同じような感覚をお持ちなんではないでしょうか?
ついでに言っとくと、若生先生には、もう15年以上前、一度ペンギン会議でご講演いただいたことがあるんです。ですから、面識もあるんですが、最近は、残念ながらお会いする機会がありませんでした。

さて、若生先生は、小さいときから動物園に関心を持たれ、最初は一般企業にお勤めしながら内外の動物園を訪れ、その歴史や展示手法の研究をされました。
研究対象の現状と歴史とを、詳細、着実に調べていく過程の叙述は、本来歴史学が専門の私にはとても親近感をもって読み進めることができる部分でした。

現在では、教え子の皆さんを交えながら、各地の動物園の監修や、基本計画策定等で、活躍されていることは、皆さんよくご存じの通りです。
特に、天王寺動物園やズーラシアのことは有名ですね。

ですから、若生先生の動物園論は、ただの外部の人間(大学や研究機関に属するだけの純粋な学者、あるいは評論家)の批評家的論評や理想主義的見解ではなく、いくつもの苦い失敗や実地の経験に裏打ちされた、具体性を伴う説得力を持っています。
つまり、「つくり手としての動物園論」という視座が極めて明確で、中途半端な「倫理的・論理的逃げ」がないのが素晴らしい、と思うのです。

実は、私は、最近「動物園論」関係の書籍からしばらく離れていました。それには理由があります。

最大の理由は、例の「旭山本」の氾濫に嫌気がさしていたこと。寄らば大樹の陰というか、勝てば官軍というか、とにかくネコも杓子も「旭山動物園礼讚」で、誉め殺しかなあ?と勘ぐりたくなるくらいの状況でしたからね。
確かに何冊かは読むに値する「旭山本」もあるけれど、そのほとんどは「ヨイショ本」か「経済的成功物語」で、動物園論としては全く話にならないレベルですよね!
だから、日本の「動物園を利用する人間のレベルも国際的に低い」と酷評されるんじゃないでしょうか?

私は、基本的に「園館の人間」ではなく、外部の人間ですが、熱烈な園館ファンを自称・自認しております。だからこそ、アマアマの動物園本は読みたくないのです。
今回、若生先生の新刊の「参考文献」に掲げられた文献に、全て目を通せていないことに、改めて愕然としています。「こりゃあ、勉強し直しだな!」と真剣に考えております。

さて、最後に…、ちょっと物足りなかったことを、3つだけ掲げます。

1つは、1980年代〜90年代前半、彷彿として世界の園館を席巻したあの「ズーチェック」運動が、全く省略されていること。
園館ファンとしては、わからないではないのですが、あのアンチズーの動きは、「アニマルライツ」と共に、抜き差しならない危機感と実質的な変革を園館関係者に迫ったはず。これが、内外の動物園の有り様を大きく変えた重要な社会現象だったことは、歴史的に否定できないと思います。
この点についての若生先生のお考えを伺いたかった。

2つ目は、動物園の現場スタッフ、特に管理職や中間管理職ではない「飼育担当者」が、動物園の変革をどのように支えているか、あるいは支えていかねばならないか?そういう実像・実態、現場の苦悩や喜びを紹介していただきたかった。
特に、いわゆる「指定管理制度」への移行が、「動物園の変革」にどのような影響を与えているか、わかりやすく解説していただきたかった。

3つ目は「保全」と「教育」のこと。実際に、動物園づくりを、どのように保全に繋げていくのか?
例えば、「現地調査」や「現地視察」は、素晴らしい「施設づくり」に欠かせない必須のプロセスであることに私も同意します。
しかし、ただ現地を観て動物園をつくったと主張しても、実際にモデルとしている野生地や環境が破壊され続け、肝心の生き物が死滅してしまっては意味がないのでは?
動物園の活動がこんな風に野生動物を救いました!そんな風に胸を張って主張するには、どうしたら良いのか?
そして、この「保全」活動とその姿や意義を、どのように来園者に伝えていくか?
こういうことを一体的・総合的にコントロールしていくことが、これからの動物園づくりに欠かせないと考えているのですが…。
若生先生のご意見を伺いたかったのです。

とはいえ、この本の価値は少しも減じません!若生先生、今後のますますのご活躍をお祈りしております!!

コメント / トラックバック 3 件

  1. penguinman より:

    おはようございます。恥ずかしながら、私もまだです。さっそく買って読みます。ペンギン会議での若生先生のご講演は覚えています。確か関西地区会議だったと!!!元水族館関係者としては、おそらく水族館でも若い現場飼育スタッフが同じ悩みを持っていると思います。私も微力ながら、力を出していきたいと思います。

  2. 上田一生 より:

    penguinman 様

    コメント、ありがとうございます_(._.)_!!

    最近は、いろいろな「注目本」がたくさん出ています。
    このあとしばらく、注目の新刊をご紹介していくつもりです(^o^)/「水族館本」もありますよ!

  3. penguinman より:

    おはようございます。コメント返しをありがとうございます!!!ありますよねぇ〜〜〜、水族館本もいっぱい!!!書店に1コーナーが出来るくらい!!!まだ読んでいないのを頑張って読んでいきます。そのうち、今流行の電子版が出たりして・・・・。

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