チリ、メトロポリタン動物園のギジェルモ・クビージョス氏から、最新のチリ情報をいただきました!

2011 年 7 月 10 日 日曜日

チリの火山噴火に関しては、最近チリから帰国された佐野淳さんからいただいた情報をお伝えして参りました。
今回、長年、ペンギン会議が支援してきたメトロポリタン動物園スタッフのギジェルモ・クビージョス氏から、以下のような現地の最新情報をいただきましたので、ご紹介致します。ちなみに、原文はスペイン語でしたので、スペイン語通訳のスペシャリスト=川嶋様にお力添えいただき、訳していただきました(^○^)!!
川嶋様、いつもありがとうございますm(__)m!!

では、以下に日本語訳したギジェルモ氏からの情報を引用致します。

「火山活動はたしかに私たちチリ国民に影響を与えてはいますが、まだ今の段階では、ペンギンその他のチリの野生動物にどれほどの影響を与えているかという見積もりが出ていません。でも、今回の噴火による被害や想定されるネガティブな影響を数値化していく必要があると感じています。
私たちのことを心配していただいて本当にありがとうと皆さんにお伝え下さい。

ところで、我々のフンボルトペンギンのプロジェクトについてですが、私たちが卵の採取をおこなっている島へのアクセス許可に関し少々支障が出ています。保護区域庁(これは、サンクチュアリという単語なので訳しにくいのですが、保護区などを管理する官公庁or行政機関という書き方でした)が変わるようなのです。以前は、この機関は国の文化財委員会(英語に訳したらCouncil of National Monumentsだと思います)の管理下にあり、彼らが許可を出していました。私たちも彼らの認可を受けていました。しかし今回は、行政が不適切にアクセスを妨害しています。
現在は、保護区域へのアクセス認可を出す担当は新しい環境省に変わりました。新政権になったためです。
それに加えて、雨季が始まってしまいました。でもとにかく、私たちはこのプロジェクトの遂行を諦めてはいません。どうにかして、継続の可能性を探っていきます。」

野生動植物の保全や研究の活動には、こういったハードルが常につきまといます。チリのフンボルトペンギンの繁殖地の場合も、1つの島がいくつもの官庁や政府・軍などの管轄下にあって、簡単な調査をするにも、極めて複雑・煩雑で気が滅入る手続きと交渉が必要です。

よく、保全は純然たる「理系の領域」だと考えている方に出会いますが、私自身の経験では、それは基礎知識や基本的技術のほんの一部に過ぎません。大切なのは、常に明確なゴールと関係者間の意思疏通を細かく確認し、共通認識を確立した上で、柔軟にして迅速、かつねばり強い活動を維持できる情熱と総合力を持つことです。

場合によっては、法律や政治や経済に関する専門的知識や資格が不可欠な問題に直面することもあります。また、語学やその地域の歴史・文化・風俗・慣習等に精通し、その地の複雑な人間関係や権力システムを理解していなければ、こちらの命も危ない、ということだってあります。

以前にも書いた記憶がありますが、日本のタンチョウ、トキ、ニホンコウノトリ等の例を見ても明らかな通り、1つのトリを保全するのに、半世紀以上かかることはごく普通のことなのです。だから、私自身も、生きている内にフンボルトペンギンの保全・研究活動が軌道にのり、ある程度の成果を挙げる場面に立ち会えないかも知れません。

でも、それで良いのです。生きものに関わるということは、そういうことだからです。ヒトである己の基準や物差しを無理矢理他の生きものにあてはめても、それですぐに何かがわかり、問題がスラスラと解決する等という、ドラマチックなことは、残念ながらほほ100%期待できないでしょう。

だから、トリの、いや野生動植物の保全・研究活動は、何世代にもわたって様々な人生や情熱や失敗が、撚り合わされ、紡ぎ出されて形になっていくのです。そこでは、広い視野と、偏見のない総合力や応用力が常に求められます。

ギジェルモさん!いよいよ本格的な「産みの苦しみ」、「成就への長い長い闘い」が始まりましたね!!密接に連絡をとりあいながら、へこたれることなく、プロジェクトを進めていきましょう!!

コメント / トラックバック 2 件

  1. 近藤鉄也 より:

    ご無沙汰いたしております。南知多の近藤です。
    ただ今長野県のJICA駒ケ根訓練所で語学をはじめ様々な訓練を受けています。今日は日曜日で訓練はありませんが、宿題と自主学習で1日が終わりそうです。
    ギジェルモからのメールは難しい問題ではありますが、だからと言って立ち止まっているわけにはいきませんので、みんなで知恵を出し合って進んでいきたいと思います。

    明日からまた1日5時間のスペイン語訓練が始まります。
    これを乗り越えなければチリでフンボの保全に協力できないと思うとへこたれるわけにはいきません。
    体力作りも行いながら、いろんな力を身に着けてチリに行きたいと思います。皆さんもぜひお力添えをお願いします。

  2. 上田一生 より:

    >近藤鉄也 様
    お疲れ様です_(._.)_!!また、大変貴重でタイムリーなコメントをいただき、本当にありがとうございました_(._.)_!!
    いずれ、場所を改めて、近藤さんが参画されているJAICA(ジァイカと読みます)のプロジェクトについては、皆様に詳しくご紹介し、その意義を理解していただきたいと考えておりました。

    実は、おそらく、今月か来月には、いくつかの新聞で近藤さんとそのプロジェクトについて、詳しい解説記事が掲載されるはずですので、そちらでもお確かめいただければ幸いです。
    簡単にまとめますと、チリのメトロポリタン動物園(国立の施設ですからチリ政府と言い替えてもかまいません)から、日本政府にメトロポリタン動物園におけるフンボルトペンギンの飼育・研究・保全活動推進のため、日本のペンギン飼育技術などに習熟した人材を派遣して欲しいという依頼があり、日本政府の公募に応じて採用されたのが近藤さんだ、というわけです。
    つまり、日本政府のODAの一環ですね。つまり、チリにおけるフンボルトペンギンの研究と保全活動は、いよいよ助走段階を終え、本格的な国際プロジェクトとしてのスタートをきった、とも言えるのです。

    近藤さんの力強いお言葉に励まされております(^○^)!!さらに、近藤さんには、このサイト宛に、時々「活動レポート」をいただくことになっております(^○^)!!
    今後とも、何卒よろしくお願い申し上げますm(__)m!!

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