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葛西臨海水族園、開園20年、おめでとうございます!

2009 年 10 月 27 日 火曜日

葛西臨海水族園は、2009年9月9日で、開園20周年を迎えた。関係者の皆様、本当におめでとうございます!!

写真は、開園式典に招待された時に撮影したもの。今と比べて下さい。まさに、隔世の感がありますねぇ!
写真の上で一番目立つのは、なんと言っても樹木でしょうか?20年前は、植林したての「はげ山」って感じ。あの建築業界で有名な栄誉を勝ち取った美しい「ガラスドーム」も、周囲の緑が貧弱だと、イマイチ映えませんなあ。

開園式典  watching001-08  開園当初  watching001-09

空、光、風、水、そして緑。葛西臨海水族園のメインゲートの向こうには、そういう世界が展開する。20年という歳月が、その演出を仕上げてくれたのです。
いやいや、緑は、ほったらかしであのようにみごとな豊かさを勝ち得たわけではない。日々、吹きつける潮風と闘いながら、コツコツ手入れと工夫を怠らなかった造園技術者の精進の賜物だ。

2009年現在  2009年現在

遥か東京湾に向かって見渡せば、左手対岸には某有名リゾート施設がそびえ。右手には巨大な観覧車が、夜ともなれば、妖しく華麗な電飾に彩られて旋回する。
ここに、「猿山ができた!」と騒がれたのは、もう20年も昔のこと。多数のフンボルトペンギンと南米から導入した多数のイワトビペンギンが、屋外ペンギンプールの主役だった。どちらの種も、岩場ときってもきれない関係がある。

開園当初猿山

とはいえ、「氷山のお友達」と信じられていたペンギンのプールに、コンクリート製の「岩山」がそそり立ったのだ!しかも、ここは水族館だぜ!?岩山なんて場違いな! そういう感覚で受け止められた。
普通の入園者の感想ならば、しかたがない。しかし、この表現をマスコミが面白がってとりあげた。それがまた、新しい宣伝効果を上げた。皮肉な結果だ。

だが、そのおかげで、ペンギンの生息地に関する一般の認識が少しずつ変わっていった。イワトビペンギンの生息地の写真を、資料の一部として提供した私も、内心ほっとしたことを憶えている。

ただ、フンボルトペンギンの生息地や周辺環境に関する映像資料は、この段階でも全く不十分だった。そのせいか、岩場はいつまでも剥き出しの岩場のままだった。実際の繁殖地が岩場ではなく、グアノや植生がある場所だということが広く認識されるようになるには、ペンギン会議の生息地ヘの調査旅行=エコツアーが何回か行われる必要があった。

葛西の職員も直接調査に加わり、その旅で得られた映像資料やデータは、展示や解説に反映された。私自身も、何回か「ペンギン講演会」や企画展に協力した。
さらに、葛西臨海水族園のペンギンプールは、国際交流とペンギンの保全を推進する舞台の役割をも果たす。

調査中

まずは、1996年、世界で初めてフンボルトペンギンの保全について話し合う国際会議「フンボルトペンギン保護国際会議」が横浜で開かれた。この時、各国から参加したフンボルトペンギンの専門家達が葛西を訪れ、そのペンギンプールで語り合ったことを忘れてはならない。

また、2006年、ペンギン会議が長年交流してきたチリ国立メトロポリタン動物園の職員を日本に招いた時も、この葛西のペンギンプールで、日本の先進的な「飼育・管理技術」を研修してもらった。

1996年

ペンギン会議研究員としての私の20年は、まさに葛西臨海水族園の20年と重なるところが多い。開園前、ペンギン担当だった堀秀正さん。今はニュージーランドで研究者として活躍している沼田美穂子さんと、イワトビペンギンのことで奔走していらっしゃいましたね。当日の懐かしい写真を眺めていると、年甲斐もなく涙が出てきます。

「プールの水はどれぐらい長く換えないでいられるんでしょうね?」、「岩場に植栽を入れましょうよ!」、「自然に生えてくるススキは切らないでいいんじゃないですか?」等々。飼育担当者のご負担や水族園のルールも知らず、勝手なことばかり言って、本当に申し訳ございませんでした。
しかし、葛西のペンギンプールが世界に誇れる日本の財産の1つであることは、私の堅い堅い確信でもある。ペンギン展示とペンギン保全の中核施設の一角として、今後とも永く、素晴らしく有意義で、先進的な活動を続けていただきたい。

2009年現在  2009年現在

コメント / トラックバック 6 件

  1. penguinman より:

    私も懐かしいです。水族館でペンギン担当になって最初にペンギンのことで葛西でお会いしたのが堀さんでした。今でも忘れられない東京大雪の日でした。その後数々のご教授を賜り、感謝しております。ところで常川さんが20周年で来日されています。先生は20周年式典には参加されなかったんですか?

  2. 上田一生 より:

    懐かしいでしょう!!堀さんと小河内さんの写真なんか見てると、20年前にタイムスリップしちゃいます。いずれ、penguinmanさんの写真も紹介しちゃいましょう!!

  3. さかもと より:

    いろいろとなつかしい写真がたくさん。

    20周年の式典はやっていません。記念の講演会を行いました。
    常川さんには水族園長から感謝状を贈呈しました。

    ちなみに、開園式典は10月9日です。招待されていたんですね。

  4. 上田一生 より:

    さかもと 様
    コメント、ありがとうございます!!そうですか、式典はなかったんですね。記念講演会では、どなたが話されたんですか?さかもとさんですか?常川さんには、来日されてから、まだお目にかかっておりません。ペンギン会議でも、感謝状を贈呈しないといけませんねぇ!それから、葛西のオープン月を1カ月間違えまして、本当に申し訳ございませんでした!!オープン式典のポジフィルムを納めたケースに「9月9日」の日付があり、それを鵜呑みにしてそのまま書いてしまいました。また、「ペンギン懺悔室」で、改めて訂正とお詫びを致しますので、お許し下さい。今後とも、ご指摘を、よろしくお願い申し上げます!!

  5. とり より:

    約1年前の日記に突然のコメント、失礼します!
    実は、恩賜上野動物園のキングペンギン(全4羽)が今朝、葛西臨海水族園へ異動になりました。
    ホッキョクグマ・アシカ・アザラシ舎の改修に伴い西園でニシツノメドリと一緒に生活していましたが、急遽、異動が決まったようです。

    今のところ、葛西では展示の予定はないそうですが、これを機に葛西にも足を運んでみようと思っています。
    上田先生が関われていたのですね・・・なるほど、繁殖成績がいいのもいい施設といいスタッフさんがあってこそ♪

    近日中に訪問してみます(^_^)。

  6. 上田一生 より:

    とり 様
    コメント、情報をありがとうございました_(._.)_!!上野動物園では、独自の考え方で、展示動物の再編成を他の「都立動物園」と連携して推進しているようです。
    今回の「キングの移動」も、そういう新しい動きの一環ではないでしょうか?ただ、上野動物園には、かつて「世界有数のペンギンコレクション」を誇りにしていた時代があります。その長く、誇らしい歴史を自ら放棄する以上は、それを上回る「有意義で魅力的、かつ最新の展示」を実現していただきたいと思います。
    そういう意味で、私は、今回の「ペンギン移動」に大変注目しております!

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