近藤鉄也さんのチリ便り〜第35回〜「オーシャン・ブリーズ号座礁事故後初めてのアルガロボ調査」の報告とチリの海洋船舶事故にともなう救護体制についてレポートをいただきました(^○^)!!

2012 年 8 月 30 日 木曜日

まずは、近藤さんからのメールをご覧下さい!!

上田様

お世話になります。
本日はアルガロボ調査に行きましたので、まずはそれについて報告いたします。

モニタリングしていた巣では残念ながら雛の生存が確認できませんでしたが、これまでとは違い巣にこもる成鳥も見られるようになりました。海岸にも成鳥が増え、春の繁殖期が間近に迫っているようです。
気になる座礁船の影響ですが、今回見た限りでは重油ボールの漂着や汚染された海鳥は存在しませんでした。

続いてチリでの重油汚染時の対応についてです。
チリはご存知のように南北に長く、4000キロ以上の海岸線を持っています。
海洋生物の保護センターは前回お知らせしたサンアントニオ博物館、北はバスで20時間ほどのアントファガスタ。南はバスで12時間ほどのバルパライソにあります。今回座礁した船から重油が漏れて海洋生物に影響が出た場合、その収容先は主にサンアントニオ博物館と、同じくバルパライソ州にあるキルプエ動物園になると思いますが、保護収容にかかわる予算はほとんどないので、持ち込まれた個体を受け取る消極的体制です。メトロポリタン動物園も同様に積極的保護を行う予算はありませんので、上記施設の許容量がオーバーして引取り依頼が来た場合には受け取ることになると思います。

チリは南米の中では先進国といえますが、環境行政や国民の意識としてはまだまだ発展途上なので、この点に関しては今後も先進国からの援助が必要でしょう。

本日の調査後サンアントニオに行こうと思っていたのですが、時間的に難しかったので、後日博物館へのあいさつと現地確認に行こうと思います。

ではまた連絡いたします。

近藤

チリ・アルガロボのペンギン チリ・アルガロボのペンギン チリ・アルガロボのペンギン

近藤様、いつも貴重でホットな情報をありがとうございますm(__)m!!また、アルガロボ調査でお忙しい中でのレポート制作、本当にありがとうございましたm(__)m!!

今回のアルガロボ調査は、オーシャン・ブリーズ号の座礁事故後最初の専門的現地調査ですから、重要な意味をもつ活動でしたね(^○^)!!とりあえず、油汚染された海鳥もオイルボール等の漂着物もないとうかがい、安心致しました(^○^)!!これで、オーシャン・ブリーズ号からの危険物回収作業が完了すれば、ひとまず当面の重大な危機は乗りきったことになります。砂浜に乗り上げた3万トンの船体をどうするのか?という問題が残りますから、今後も監視体勢は必要だと思います。しかし、船体の破壊がなかったことが、何よりの救いです(^○^)!!

20年近く前から少しずつ進んできた船体強化と二重外郭の義務化、さらに航路の規制が、世界中の様々な海域で徹底され浸透してきたことが、今回の奇跡的な危機回避の背景にあることは間違いないでしょう。座礁したのが広い砂浜だったという幸運な面はあるものの、もし、船体が脆弱で外郭が一枚だけだったら、あれだけの巨大な波涛の直撃に耐え抜き、大量の積み荷の重圧に耐えられたかどうか?疑問が残ります。

さて、近藤さんのご説明にあるように、南北に長大な海岸線を有するチリは、海洋生物の効果的な保全や救護体制の確立という点では、常に大きなハンデを背負っていると言わざるを得ません。さらに、これだけ長大な海岸線をもつということは、それだけ多様な海洋生態系がそこに存在し、同時に大規模な船舶事故や様々な汚染事故が起きる可能性も高いということになります。

そういう前提で、如何に迅速かつ効果的で、活動する人間にとっても安全に救護活動を展開できるか?…という課題について真剣に考えれば考えるほど、超えるべきハードルの高さと多さとを実感します。しかし、近藤さんにご報告いただいた状況を如何にとらえ、日本人としてどのような支援方法があり、それをどのようなタイムスケールでこなしていけるかということについては、準備作業を先のばしにして結論を出すことを恐れるのではなく、果敢に様々な仮説をたて、試行を繰り返すべきだと思います。

そういう意味で、今回の「オーシャン・ブリーズ号座礁事故」は、将来起きるかもしれない大規模船舶海洋汚染事故を想定した一種のシミュレーションとして、重要な意味をもっていると考えます。近藤さんの「サン・アントニオ訪問レポート」を心待ちにしております(^○^)!!

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