「オリバ号事件」経過報告〜その3〜

2011 年 4 月 14 日 木曜日

◇「第1フェイズ」から「第2フェイズ」へ

前回も記しましたが、救護活動は千差万別で、全く同じケースはあり得ません。
例えば、南アフリカで1950年代以降、半世紀以上続いてきた「重油流出事故」にともなう海鳥救護活動の歴史を概観しても、大型原油タンカー事故あり、貨物船の座礁事故あり、貨物船の沈没事故あり、かなり以前に沈没した船舶からの突然の流出事故あり、重油の不法投棄あり、バラスト水の不法投棄あり、沿岸工場からの重油流出事故あり…、といった具合で、同じことの繰り返しは、まずないと言ってよいのです。

また、1つの事故をとって見ても、「第1フェイズ=事故船舶への対応段階」が完了しない内に、「第2フェイズ=汚染生物の救助・保護段階」が始まり、いくつかのフェイズが同時進行する、ということが珍しくありません。

従って、その活動に参加し推進するスタッフには、全体をコントロールするリーダー(あるいはコーディネイター)を含めて、常に迅速かつ柔軟で正確な判断と実行力が求められるのです。
極端な言い方をすれば、ある程度強引なところがあるくらいでちょうど良いということもあるのです。
前回にも触れましたが、「豊富な経験と専門知識・技術(語学力、自給力を含む)」が不可欠なことは、言うまでもありません。

さて、それでは、「第1フェイズから第2フェイズへの移行期、オーバーラップ期」について、経過を見ていきましょう。

◇3月24日:午前中に、新たに473羽の汚染されたキタイワトビペンギンを収容し、ナイティンゲール島からトリスタン本島に移送した。

◇3月26日:大型漁船「エディンバラ号」が、ナイティンゲール島からトリスタン本島への救護個体(汚染された個体)の移送にあたる。悪天候のため、各種活動に大きな支障が出る。

作業中、ナイティンゲール島で、油汚染が原因で死亡したと思われるナンキョクオットセイの死体2つを確認。

ナイティンゲール島では、約67000つがいのキタイワトビが換羽中だが、まだ換羽が終わらないで海岸に残っている個体がどれだけいるか不明。
もし、数が多いのであれば、それらが海に出る前、つまり海岸で重油を浴びてしまう前に、予防的に回収・保護して、他の島に移送しなければならない。

さらに、世界自然遺産の島であるインアクセスブル島には、約300羽の汚染個体と、ワレン岬のコロニーに800〜1000羽の未汚染個体がいる。
しかし、同島の海岸には重油が厚く漂着し、ワレン岬のコロニーの3分の1の個体は、すでにビーチに出てきている。
このままでは、数百〜千羽の換羽終了個体が、汚染された海岸から海に出る可能性がある。

悪天候のため、ナイティンゲール島とインアクセスブル島のコロニーにいる個体の多くを収容できない状態が続く。
また、インアクセスブル島にある9つのコロニーの内、7つを確認できていない。

◇3月27日:悪天候の中、エディンバラ号が、ナイティンゲール島の未汚染個体約1000羽と汚染個体253羽を収容し、トリスタン本島に移送。

◇3月28日:ケープタウン港より、新たなタグボート「シンガポール号」が、SANCCOBの要員と機材を載せて出港。4月2日に、トリスタン本島海域に到着予定。

(つづく)

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