各種報道機関を通じて、5月2日(金)(現地時間)、チリ南部で発生した地震(M7.4)に関する情報が流れ、一部地域に「チリ当局などから避難指示が出された」と報じられました。
また、チリ南部とアルゼンチン南部(マゼラン海峡周辺)の観光地(ウシュワイアなど)では、主な港や「南極観光船」ならびに旅行客に、地震直後、混乱が生じたようです。ただし、チリ、アルゼンチン双方から「人的被害が生じた」という情報は、今のところ(5月7日(水)午前現在:日本時間)ありません。
その後、この地震と津波などによる「人的被害」に関する追加情報はありませんが、現地関係者の皆様のご無事を、心からお祈り申し上げます。
さて、この地震による「人的被害以外の野生動物への被害」をご心配される方々からいくつかご質問をいただきましたので、現時点で考えられることをお伝え申し上げます。
まず、今回の地震の震源は「チリ南部」=「ドレーク海峡北部」ですが、この海域は世界有数の「荒れる海」として知られており、ふだんから波高20メートル前後の大波(うねり)がみられるところです。確かに、「巨大地震による津波被害」には万全の注意が必要ですが、海岸で繁殖する野生動物の多くは、荒波のしぶきや海からの強風を避けられる場所で子育てをします。従って、よほどの「大津波」に直撃されない限り、壊滅的な被害を受ける可能性はそれほど高くないと想像できるでしょう。
次に、5月という時期、特に「南半球の高緯度地域(亜南極)」は、既に「冬」に入りつつあり、ペンギンなどの海鳥は「繁殖期を終え回遊期間に入って」います。キングペンギン以外の種(マゼランペンギン、ミナミイワトビペンギン、ジェンツーペンギンなど)は、繁殖地にはおらず海上にいますので、津波被害は受けないと思われます。
さらに、「ドレーク海峡沿岸部」は、面積的にも広大で海流や海岸地形も複雑なため、接近・接岸・上陸が困難な地域が多く、そこに生息・繁殖する野生動物の現状を素早く網羅的に調査することが極めて難しい場所でもあります。
今回の地震による「キングペンギンなどへの影響」は確かに心配ですが、それらに関する正確で詳しい情報が出てくるには、まだかなり時間がかかるものと思われます。
まずは、チリ、アルゼンチン両国と観光客の皆様のご無事を、改めて心からお祈り申し上げつつ、現地からの追加情報を待ちたいと考えております。
※写真は「マゼラン海峡のマゼランペンギン」。