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2011・エディンバラ動物園訪問記〜その5〜エディンバラ特製「巣場所リング」には2パターンある

2011 年 10 月 27 日 木曜日

だいぶ前に映像をご紹介して、個体の名前を教えていただいた「ジェンツーのアルビノ」=スノーフレイク。最初は「換羽異常で羽が抜けてるのかな?」と思ったが、よく見るとこの通り!

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ただ、全体にジェンツーもイワトビも背中の羽毛の色が薄い。特に、ジェンツーはクチバシや両足の黄色(またはオレンジ色)がかなり薄い。たぶん、与えている餌の魚の成分によるものだと思う。だから、スノーフレイクの羽色や体色の「白っぽさ」があまり目立たない。まあ、色が多少薄くなろうと健康状態に異常がなければいいのだが…。ちょっと気になるところではある。

さて、エディンバラの飼育の工夫と言えば、まず思い出すのが繁殖のための「巣場所リング」。日本からエディンバラに短期研修に出かけ、自分の施設でもジェンツーを飼育することになると、必ずこの道具を使う。小石などをクレーター状に積み上げて巣をつくるジェンツー達のための「特製品」。

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この「輪」の中に巣材をつめこんでいけば簡単に巣ができる。利点は、巣づくりに「上手い下手」の優劣がつきにくいこと。それだけじゃない。巣材の小石が散らばらないから、巣材の奪い合いを少なくできる。また、適性な縄張りを人間が管理できるので、ムダな闘争を回避できる。さらに、巣材の小石が散らばらないので、小石の補給が少なくて済むし、掃除も楽だ。もう1つ加えると、リングの縁がストッパーになるので、卵が巣の外に転がり出る可能性を低くできる。

元来、こういう巣をジェンツー達がつくる一番大きな理由は「水対策」のため。降り積もった雪がとけたり降った雨が巣の中に流れ込んだりすれば、卵が冷たい水に浸かり、中の胚が死んでしまう。つまり、小石など水はけのよい巣材を使って、キッチリ巣の形を維持することが繁殖の成否を大きく左右する。それをサポートしてくれるスグレモノが「巣場所リング」なのだ。エディンバラのジェンツー軍団の優れた繁殖率を支えているのはこのリングだと言っても過言ではない。

ところで、この「金属製の傘」は、昔からありましたっけ?前回エディンバラに来たのは、もう20年近く前だから、ハッキリおぼえていないんですが…。たしか、「傘」はなかったような気がする。

エディンバラ動物園02 エディンバラ動物園03 エディンバラ動物園04

これも、たぶん主目的は「雨よけ」、「陽射しよけ」なんだと思う。しかし、巣場所全体をよく見ると、必ずしも全てに使われているわけではない。どういう基準で使い分けているのかについては確認できませんでした。申し訳ない!

ひょっとすると、最近の温暖化でエディンバラでも、年間降水量や夏の日照時間が増えているのかもしれない。「傘」は、その対策の1つなのだろうか?そういえば、ミスト発生装置も昔はなかった。今では、いくつものスタンドが用意されている。

さて、ここでご注目いただきたいのは、ジェンツーのリングとイワトビのリングの違い!よおく見て下さい。微妙な形の違いに気づきましたか?そう!イワトビの方が平らで車のタイヤのような形をしている。しかも、イワトビは丘場に植えてある草を引き抜いて巣材にしている。たしかにフォークランド諸島のジェンツーは、植物を巣材に使うことが報告されている。しかし、イワトビに比べれば使用頻度は低い。そんな、生態の違いを観察できるのだ!

さらに…、巣材の小石にもご注目!!これも微妙な差だが、ジェンツーの小石の方がイワトビより少し小さいことがわかる。ジェンツーの巣は、緻密に高くつくられる。巣材の大きさが重要なポイントなのだ!!

エディンバラ動物園09 エディンバラ動物園10

エディンバラの飼育の工夫は、演示の工夫と自然に合体し、相乗効果をあげている。そういうファインプレーが随所に隠されているから油断できない。

次回は、それでも「ちょっと気になる」ところ、について見ていきたい。

コメント / トラックバック 2 件

  1. Nachi より:

    以前、エディンバラ動物園にスノーフレイクや白っぽいヒナたち、ヒナと親の追っかけっこ、そして傘について質問した時に、それぞれ返事をもらいましたのでそれを転載します。(正確な翻訳には自信がないので原文そのままを…)

    The penguin you are referring to is called snowflake, he suffers from a condition called leucism. This is where the individual suffers from the reduction of all types of skin pigmentation, not just melanin as in the case of an albino sufferer.

    Snowflake doesn’t suffer from his condition, he just looks different. He successfully finds a mate and has reared a many chicks over the years.

    This year two chicks have been born that have the same recessive gene as snowflake, this means that somewhere down the line they are distantly related to snowflake.

    The chicks will sometimes chase the adults looking for food, as they get older the parents will stop feeding them as much, as they need to learn to fend for themselves.

    The umberella you are referring to appear on a few of the nests with younger chicks that don’t move around so much yet. This provides them with shelter from the sun, although our weather recently has been very poor.

  2. 上田一生 より:

    >Nachi 様
    貴重な情報をありがとうございましたm(__)m!!
    なるほど、「スノーフレイク」の細かい事情がよくわかりました(^○^)!!
    スノーフレイク=彼(♂)は、アルビノではなく、いわゆる「leucism=白化個体」だったんですね。ということは、外見が白っぽいだけで、普通の個体と大きな違いはないわけです。
    彼はつがい相手を見つけ、すでに何年にもわたって繁殖に成功しているんですね。特に、今年繁殖した彼の2羽のヒナは、スノーフレイクと同じ遺伝的特徴を持っているとのことで、今後の成長が楽しみです。
    このヒナたちは、時々他の成鳥達を追いかけて食べ物をねだるようです。

    金属製の傘の件も、まだ巣から出歩けない小さなヒナ達のための、「日傘」・「雨傘」がわりだとわかりました。「最近、ずっと天候不純だ」という部分がちょっと気になりますね。こういった細やかな気配り、工夫と分析が、エディンバラ動物園のペンギン展示を世界一の水準に押し上げた原動力の1つなのだと思います(^○^)!!

    Nachi様、今後とも引続きエディンバラのペンギン達の観察を、よろしくお願い申し上げますm(__)m!!

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