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サイト開始2周年特集「私的ロンドン動物園ペンギン案内」〜その1〜「ロンドン動物園のペンギン飼育はそろそろ150年目を迎える」

2011 年 8 月 22 日 月曜日

株式会社ヴァイスヴァーサの平川さんと井上さんのお力添えをいただき、このサイトを始めて、この8月末で丸2年になる。お二人のお力で、新しい「ペンギン仲間」や貴重な情報をたくさん得ることができた。ここで、改めてお二人に深く感謝申し上げます!!

9月からはいよいよ3年目に入る。新しい年を迎えるにあたり、何か新しい試みをしようと考えてみた。

この8月、偶然イギリスに行き、動物園を訪れることができた。この機会をとらえ、日頃から考えていたことを含めて、最近のイギリスにおけるペンギン展示について、簡単にご紹介したい。

まずはロンドン動物園から。ロンドン動物園は、世界で初めてペンギンを飼育した施設。以前、拙著『ペンギンは歴史にもクチバシをはさむ』(岩波書店、2006年)に記した通り、イギリスに生きたキングペンギンが運び込まれたのは1865年3月27日のこと。つまり、今から146年前のことだ。

なぜキングなのか?なぜイギリスなのか?等の疑問については、上掲の拙著をご参照いただきたい。

だから、「ペンギン飼育の歴史」はイギリスで、ほぼ150年前に始まったと言える。そういう意味で、ロンドン動物園とペンギンには深い因縁と長い歴史がある。

今年=2011年5月、そのロンドン動物園に新しいペンギン展示飼育施設=「ペンギンビーチ」がオープンした。すでに、専用サイト等でご覧になった方も多いだろう。私の知り合いの「園館+ペンギンファン」の中にも、すでに数人の方が「ペンギンビーチ」を訪れたらしい。ご本人や、ロンドン動物園のペンギン担当者から話を聞いている。皆さんのブログでも、すばらしいレポートが発表されているから、ぜひ詳細はそちらもご参照いただきたい。

ここでも、その新しいペンギン展示施設をご紹介するつもり。でも、私の関心は、新しさもさることながら、なぜロンドン動物園がそこまでペンギンにこだわるのか?その理由を考えてみたい、という点にある。

今回から何回かにわたり、ロンドン動物園やイギリスの動物園、ひいては欧米と日本の園館のペンギン展示に対する姿勢の違い、バックグラウンドの特徴について考えていきたい。

さて、イギリスの動物園については、昔から良いガイドブックが数多く出ている。例えばこれ、『THE GOOD ZOO GUIDE』(John Ironmonger著、1992年)。この本にはイギリスの31の「良い動物園」が紹介されている。前半は、動物園の活動に関する概説、後半は各施設の紹介になっている。当然、ロンドン動物園も紹介されている。

『THE GOOD ZOO GUIDE』(John Ironmonger著、1992年) 『THE GOOD ZOO GUIDE』(John Ironmonger著、1992年)掲載された地図 『THE GOOD ZOO GUIDE』(John Ironmonger著、1992年)なか見

脇道にそれるが、アメリカ合衆国の動物園については、こんな本がある。『ZOO:Profiles of 102 Zoos,Aquariums, and Wildlife Parks in the United States』(Anthony D. Marshall著、1994年)。ご参考まで…。

『ZOO:Profiles of 102 Zoos,Aquariums, and Wildlife Parks in the United States』(Anthony D. Marshall著、1994年) 『ZOO:Profiles of 102 Zoos,Aquariums, and Wildlife Parks in the United States』(Anthony D. Marshall著、1994年)

では、ロンドン動物園に戻ろう。

動物園の歴史についても、様々な文献が出ているので、それらを全てここで吟味していくと大変だ。そこで、ロンドン動物園についての歴史的文献を少しだけご紹介しよう。

例えばこれ、『LONDON’S ZOO』(GWYNNE VEVERS著、1976年)、あるいは『London Zoo from old photographs 1852-1914』(John Edwards著、1996年)等は、写真や図版が豊富で分かりやすくまとめられている。

『LONDON'S ZOO』(GWYNNE VEVERS著、1976年) 『London Zoo from old photographs 1852-1914』(John Edwards著、1996年) 『London Zoo from old photographs 1852-1914』(John Edwards著、1996年)なか見

そして、最近出たこの文献には、ペンギン飼育に関する新しいエピソードが紹介されている。その本は『The Zoo:The Story of London Zoo』(J.Barrington-Johnson著、2005年)。

『The Zoo:The Story of London Zoo』(J.Barrington-Johnson著、2005年) 『The Zoo:The Story of London Zoo』(J.Barrington-Johnson著、2005年)なか見

では、そのエピソードとは?

ロンドン動物園では、1901年に完成したアシカプールで、世界で初めてアシカとケープペンギンを同居飼育した。しばらくは何事もなく、両者は共存していた、という。しかし、ある時、アシカがペンギンを食べてしまったので、ペンギンはアシカプールを出ることになった。そういうエピソードである。

私は、また、これまでの著者は、アシカが意識的にペンギンを食べた、と考えていた。しかし、今回の新しい文献によれば、これはどうやら事故だったらしい。つまり…「アシカもペンギンもプールに投げ込まれた魚を食べていた。だが、不幸なことに投げ込まれた魚をアシカが尻尾からペンギンが頭から食べようとして、アシカがペンギンまで呑み込んでしまった…」ということらしい。

それはともかく、文献以外にも、現在ロンドン動物園のショップで売られているポストカードの中にも、かつての飼育ぶりをうかがえるヒントが隠されている。

ロンドン動物園のショップで売られているポストカード-1 ロンドン動物園のショップで売られているポストカード-2 ロンドン動物園のショップで売られているポストカード-3 ロンドン動物園のショップで売られているポストカード-4 ロンドン動物園のショップで売られているポストカード-5

古い写真のポストカードは、1911〜1927年くらいのもの数点。やはりキングペンギンが多い。これらでハッキリするのは、例のアシカプールから追放された後、ペンギンたちはしばらくの間「土と草がある施設」で飼われていたらしい、ということ。

1934年、あの有名なテクトンによる斬新なコンクリート製ペンギンプールに移るまで、ペンギンたちはそんな展示場で過ごしていたのだ。

つまり…、今年オープンした「ペンギンビーチ」は、必ずしも全て真新しい展示手法だけで構成されているわけではなかった、ということ。

長い歴史をもつ施設では、様々な展示手法が、各々の時代の要請に応じて変転するのはよくあること。これが決定版だ!!などと、あまり力まない方がよいのかもしれない。

では、次回はいよいよ新しい施設を見ていこう!!

コメント / トラックバック 6 件

  1. manchot より:

    146年前・・・・江戸時代かな?
    日本の動物園にペンギンが来たのは、何月何日なんでしょう?

  2. 上田一生 より:

    >manchot 様
    そうです(^○^)!!大政奉還が1865年ですから…、ギリキリ江戸時代ですね(^o^)/
    また、日本の動物園に初めてペンギンが来たのは1915(大正4)年6月10日だと言われています。小沢磯吉という人物が、上野動物園にチリからのフンボルトペンギンを寄贈したようです。
    だから…、日本のペンギン飼育史は96年目ということですね(^o^)v!!2015年が「飼育百周年」になります(^○^)!!何か記念行事でもやりましょうか?(^o^)/

  3. manchot より:

    ・・・ペンギン大百科に書いてましたね(ちゃんと読んでおけって(^^;)
    ということで、6月10日は「ペンギンの日」にしましょう(^^)v

  4. ぺんふみ より:

    そうなんですか!
    私もペンギン百科持ってるのに・・・(TT)
    写真ばっかみて、うっとりしてるかも^^;

    ペンギン飼育100周年イベント!!!!!!
    絶対して欲しいですぅぅ^^
    考えるだけでも、うきうきしますね。ペンギンのお祭りを是非実現させて下さい。m(__)m

  5. 上田一生 より:

    >manchot 様
    「ペンギンの日」制定のアイデアは、かなり以前からありましたが…、まだ実現しません(~_~;)
    日本でのペンギン飼育百周年の年がチャンスかもしれませんね(^o^)v!!

  6. 上田一生 より:

    >ぺんふみ 様
    「ペンギン飼育百周年記念イベント」、私もぜひ実現したいです(^○^)!!何か楽しいアイデアがあればお知らせ下さい(^o^)v!!
    お待ちしております(^o^)/

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