2025年12月4日(木)発行の学術誌『Ostrich Journal of African Ornithology』最新号に、ケープペンギンに関する新しい論文が発表されました。
論文のタイトルは「2004年以降のケープペンギンの高い死亡率の原因は飢餓だった」。著者は、J. M. クロフォード博士をはじめとする6人の研究者グループ。彼らは「南アフリカ森林・漁業・環境省(DFFE)」の研究チームとして、ケープペンギンと漁業資源との関連について科学調査を行っています。
特に、クロフォード博士は、40年以上にわたってケープペンギン研究を継続され、ケープペンギン研究の第一人者として知られています。
今回の論文の詳細は、以下のサイト(☆「」)にてご確認下さい。
☆「2004年以降、南アフリカでアフリカペンギン(Spheniscus demersus)の成鳥の死亡率が高かったのは、飢餓が原因と考えられる。ダチョウ:第0巻、第0号 https://share.google/W00SbUt25QEOh2mTF」
ポイントは次の通り。
①、2004年、ケープペンギンの主要な繁殖地だったダッセン島、ロベン島で繁殖していた成鳥(合計約62,000羽)の約95%が、その後8年間、2011年までの間に死亡したこと。
②、①の主な原因は、ケープペンギンの換羽期の飢餓だと考えられること。
③、この地域で繁殖していたケープペンギンの成鳥の換羽期間は約21日間だが、その前後、主な食べものであるイワシを十分に捕獲できなかったことが、飢餓の原因だと考えられること。
④、ダッセン島、ロベン島で繁殖するケープペンギンの成鳥たちが主としてイワシを捕獲していた海域はアガラス岬西方海域だが、この海域の「イワシ総量(イワシ・バイオマス)」は、平年の約80%に達した2006年が最も高かったが、2005~2010年の間のそれ以外の年は、全て約20%ほどだったこと。
1990年代まで、ケープペンギンは、イワシなどのエサ生物が豊富な年は、1年間に2~3回繁殖すると考えられていました。また、換羽は2回目または3回目の繁殖後に行われ、換羽後は、しばらく「自分の巣場所とエサの豊富な海域とを往復して体力を回復させる」と言われていました。
特に、2010年代後半以降、ケープペンギン個体数の激減や主要な繁殖地の変化や移動が顕著に見られるようになり、「エサ生物の不足」が主な原因の1つだと想像されていました。今回のクロフォード博士グループの研究は、その「仮説」を裏付ける具体例の1つだと言えるでしょう。
論文の中で、研究チームは、「イワシ・バイオマスの長期的増加」をどのように実現できるかという課題を提示しています。
今後10年以内に「ケープペンギンの野生個体群が絶滅する可能性が高まっている」という懸念が深まる中、個体数減少の主因が特定され、それをいかに克服していくのか?知恵を絞り、協力していくことが求められています。
※写真は2枚とも「ロベン島のケープペンギン」、1994年8月撮影。岸辺近くには、ジャイアントケルプが繁茂しています。岩場が黒いのは「漂着した重油」が染み込んでしまったため。この年、「ケープペンギンの総個体数」は16~17万羽と言われていました。







