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2011・エディンバラ動物園訪問記〜その3〜「一見無関係に見える演出」に敢えて注目してみる(^○^)!!

2011 年 10 月 19 日 水曜日

園館には「遊び」が必要だと思う。ここでいう「遊び」とは、遊戯施設や「ショー」のことではない。また、記念撮影のためのサービスやポイント(顔だしボード等)を設けることでもない。もちろん、「芝生広場」等の空間をタップリとることでもない。

エディンバラ動物園園内の様子

要は、園館を文化施設だと感じられる、気の利いた演出が欲しいな、と思うのだ。

欧米の園館を巡っていて、いつもホッとするのは、あちこちにさりげなく「芸術性を感じられるしかけ」が施されていること。例えば、彫刻作品、オブジェ、銅像、絵画、そして野外音楽堂等の演奏施設。たしかに、私たちは、園館に「生き物」を見に行く。では、それだけで満ち足りた気持ちになれるか?というと、どうだろうか?

エディンバラ動物園オブジェエディンバラ動物園エディンバラ動物園キングペンギンのオブジェ エディンバラ動物園ペンギンの親子オブジェ

かつて、園館が単なる「見世物小屋」だった時代がある。そして、非常に残念だが、現在でもその残像が消えていない施設も、数少ないが依然として存在する。では、どこが「見世物小屋」という雰囲気を醸し出しているのか?

それは、動物が陳列されていて、いかにも見やすいか否か?という点にある。お客は「動物を見に来た」のだから、動物は見やすく展示されていなければならない。いつでも、誰でもが、同じように、確実に動物を見られなければならない。別の言い方をすれば、その動物の個性的生態やその動物の健康状態など、お構い無しなのだ。

お客にとっては、「入場料に見合う見世物」が大事なのであるから、「オオイタチ」が「大板血」であろうと、そこに何かがあれば、木戸銭に見合うサービスは提供した、ということになる。昔、温泉場によくあった「秘宝館」や「万宝館」は、まさにそれだった。生き物が、怪しげなミイラや標本や骨や皮や、徳利を提げたタヌキ等と一緒に、薄暗い小屋の中に雑然と並べられ、亀の池には必ず小銭が沈んでいた。

人の脂で汚れた暖簾を潜って出ると、次の小屋には射的や金魚すくいやパチンコ台が並んでいた。貧乏時代のアミューズメントの定番だ。しかし、それがナゼか楽しかったし、なんの疑問も持たなかった。高度経済成長は、動物園に近代的遊園地を併設し、薄汚れた小屋に代わってコンクリート製のオシャレな水族館を全国各地にちりばめた。

でも、確かに見てくれは豪華になったが、そこには「見世物小屋のシッポ」が見え隠れしていた。「大板血」が姿を消し、亀のプールに小銭が投げ込まれることはなくなった。しかし、「動物を見せていればそれでよい」という雰囲気はなかなか消えてくれない。

ペンギンで言えば、「白いコンクリート氷山にフンボルトペンギンが群れている」光景は、ほぼなくなった。しかし、以前にくらべて、よりペンギンのことがわかりやすくなったか?といえば、ちょっとあやしい…。

大事なのは、「ペンギンプールそのもの」だけではない、ということ。現在、園館に通うわれわれは、「見世物小屋」に通った同じお客ではない。「見世物小屋時代」は、半世紀以上過去の出来事になりつつある。現在のお客は、「生き物がいる」だけでは、おそらく満足や充足感は得られまい。「動く生き物」ならば、テレビやビデオ、映画の世界にも溢れているのだ。いや、ひょっとすると、映像世界の生き物の方がわかりやすかったりする。

「生きた本物が見られます!」だけでは、現在、そして未来の園館としては、機能不足なのだ。「どう見られるか?」、「付加的情報や体験ができるのか?」、「支払った入場料はどう活かされるのか?」という点が重要なポイントだ。そして、さらに…。

メインのステーキだけでなく、付け合わせの野菜やデザートが如何に充実しているか?動物からふと目をそらした時に、そこに購買意欲を刺激するオシャレな売店があったり、ペンギンプールを眺めながら美味しいコーヒーが飲めるテラスつきのカフェがあったり、楽しげな彫刻が配置されていたりすれば、どうだろうか?

エディンバラ動物園カフェエディンバラ動物園カフェエディンバラ動物園 エディンバラ動物園

以前ご紹介した「ホルスタインペンギン」は確かに異様だ。しかし、「???」という反応を示すか否かだけでなく、ホルスタインの中に、いくつペンギンらしさを発見できるか?そういう意味で、これは「解説教材」としての機能も担っているのだ。しっかりした観察眼を磨く場は、なにも真面目な観察会だけの専売ではない。スコッツのユーモアに触れながら、じっとホルスタインの体に注目するのも、また一興というものだ。

ホルスタインペンギン

次回は「解説標示」について観ていきましょう。

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