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ちょっと異色の「動物園論」には、刺激と仕掛が一杯詰まってる(^o^)/

2011 年 2 月 16 日 水曜日

ここまで2冊、いわゆる正統的、真っ向勝負の「動物園論」を見てきました。あるいは「総論的」著作、といっても良いかもしれません。
次に「水族館論」を見ていくつもりでしたが、ちょっと思い出した労作がありましたので、もう1冊、「動物園論」を続けたいと思います。

『物語上野動物園の歴史〜園長が語る動物たちの140年〜』(小宮輝之著、中公新書、2010年6月発行)は、私にとって、いろいろな刺激と示唆に富んだ「ビックリ箱」のような本でした。

『物語上野動物園の歴史〜園長が語る動物たちの140年〜』(小宮輝之著、中公新書、2010年6月発行)

先にご紹介した2冊の著者、若生先生も石田先生も、以前から存じ上げており、また、直接様々なお話をうかがったことがことがある方々です。でも…、小宮園長は、私にとってはかなりスペシャルな存在なのです!

私には、自分で勝手に決めてるんですが、何人もの恩師がいます。
「ペンギン学」については、当然、青柳昌宏先生、ディー・ボースマ先生をはじめとする先生方。
「園館学」については、増井光子園長はじめ代々の上野動物園の園長の方々並びに日橋一昭園長、また、小森厚先生をはじめとする、「東京動物園協会」のコアスタッフの皆様。
そして、水族館については、内田詮三館長、石橋敏章館長、楠田幸雄館長には、一方ならぬお世話になっております。

これらの方々からは、私が「ペンギン基金」や「ペンギン会議」で活動をしてきた過程で、大変なお世話になり、貴重なご指導をいただき、様々な形でサポートを頂戴致しました。

中でも、小宮輝之園長には、「ペンギン会議」立ち上げの際(1990年前後)、言葉では言い尽くせない程のご支援をいただいたのです。
当時、小宮園長は「飼育課長」として、例の東園のアシカ池前にある事務所の1階にいらっしゃいました。私は、講演会の打ち合わせや、ペンギン担当の降籏さんを訪ねて、しばしば事務所にお邪魔していました。

ある時、事務所内での恒例の「反省会(今は不可能ですが、当時は実に和やかで盛り上がる反省会が日常的に行われ、部外者の私も、時々「持ち込み」を手に、参加させていただいておりました(笑))」の中で、小宮課長から、こんなふうな「提案」をいただいたのです。

「ねえ上田さん、フンボルトってさあ、血統登録できないかなあ…?もしできたらさあ、アライグマでもなんでも『スタッドブック(血統登録台帳)』が作れちゃうと思うんだよね!」

これが、日本での「ペンギン・スタッドブック作成」の号令だったのです。
つまり、個体数の多いフンボルトペンギンで血統登録が可能ならば、他の個体数の多い動物でも、有効なスタッドブック作りが可能になるだろう。小宮課長は、フンボルトで、大規模なスタッドブック作成のシミュレーションを試みようとされたわけです。

そんなわけですから、小宮園長の書かれた「上野動物園の歴史」を読まないで放置する訳には、とてもいかないのです!去年出版された本ですが、皆様、もう読まれましたか?

上野動物園の歴史は、大著『上野動物園百年史』にもまとめられています。
しかし、1982年にそれが刊行されてから既に29年。小宮園長もご指摘の通り、前史を含めると140年(歳)にもなる上野動物園は、さらに様々な新しい歴史を刻んできました。

今回の著作は、その空白に一石を投じる試みだと思います。そして、その目的は、かなり達成されているかな!?というのが、私の印象です!

新書ですから、『百年史』とボリュームで勝負はできません。そこで、園長は2つのファクターを軸に据えたのだ、と思います。

1つは、上野動物園が大きく変身した「事件とその背景」の目録を作ること。
2つ目は、自身が「動物園オタク」であり「動物オタク」であることを告白すると同時に、だからこそ個々の動物にこだわった解説に徹したこと。

私が一番ひっくり返ったのは、やはり「あとがき」です!
「あ〜あ、言っちゃった!」って感じです。業界では、園長とそのお仲間の「冥土の土産ツアー」は、かなり有名なお話。まだ、私は参加させていただいておりませんが、某N園長は「常連」です!

かつて、小宮園長とはチリの「ペンギンツアー」をご一緒しましたが、あの時も、園長はごついカメラを覗きっぱなしでした。きっと「冥土の土産ツアー」でも、そうなんでしょうね…。

さて、この本は、そんなわけで、単なる単調な「備忘録」や「回想録」ではありません。
そこには、「なぜ動物園は変身してきたのか?」、「新しい動物園にはどんな配慮が必要か?」といった問いへの深いヒントが隠されていると思います。

なんだか、小宮園長に、新しい「宿題」を出されたようです。勉強しなくっちゃ!!

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